カリフォルニア大学の新アドミッション戦略

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2020年5月、カリフォルニア大学(以下UC)のナポリターノ学長は、5年計画でSATとACTを廃止し、これに代わる テストを開発する計画を提示しました。今回は、全米が注目する同大学のアドミッション戦略について解説します。

テストオプショナルのトレンド

SATやACTの点数は、一般的にマイノリティーや低所得者層で低い傾向があり、テストの義務付けは公平性を欠 くと、以前から指摘されていました。そこで、偏りのないアドミッションのためにテストスコアの提出を必須要件ではなく任意とする「テストオプショナル」を採用する大学が増えており、パンデミックがそのトレンドを後押ししています。

The College of Wooster(OH) や、Macalester College(MN)、 University of Oregonは、20年春のSATとACTの中止を機に、テストオプショナルを恒久的に採用すると決めました。Tufts University(MA)は向こう3年間はテストオプショナルを導入し、その間に効果を見極めます。Cornell University(NY) やUniversity of Washingtonは、20-21年度のアドミッション(21年秋入学)限定でテストオプショナルを採用し、その成果が翌年度以降の方針に影響すると思われます。

UCの5年計画の概要

UC各校も、20-21年度のアドミッションをテストオプショナルとすると発表済みですが、今回提示された新アドミッション戦略では、さらに1年延長します。その後、2年間のテストブラインド(テストスコアをアドミッションで考慮しない)期間を経て、5年目からは、UCが新たに開発するテストを採用します。ただし、23-24年度までのテストブ ラインドの期間中は、奨学金の評価や、州外学生や外国人留学生のアドミッションにおいてSATとACT のテストスコアが使われる可能性があります。今回の学長の提言は、単にテストスコアの提出を義務付けないだけでなく、 既存のテストそのものをアドミッションから外すというドラスティックな改革計画を示したことがポイントです。UC が新たに開発するテストについて、まだ詳細は発表されていませんが、UC各校だけでなく、CSU(California State University)の各大学でも利用される見込みです。UCは、小中高の教職員、アドミッションテストの専門家、大学の先生などの意見を取り入れながら、テスト開発を進めます。困難が予想されますが、仮に5年目からのアドミッションに新テストが間に合わなくても、SATとACTの復活はないそうです。

UCの新アドミッション戦略

アメリカの大学のアドミッションは、ホリスティック(全体的)アプローチが基本です。学力はもちろん、今までの人生をどう生きてきて、どう成長してきたのかを全体的に評価することで、学生の将来性を見極めます。テストオプショナルの導入の前提として、SATとACTのスコアがなくてもホリスティックなアプローチできちんと学生の評価ができるという考え方があります。アドミッションのスタッフが充実している私立大学がテストオプショナルを牽引しているのもうなずけます。UCが新たにテストを開発する背景には、世の中の流れとしてテストオプショナルは不可避であるが、一方でテストなしで学生を評価するのも難しい、巨大州立大学ならではの苦悩があります。パンデミックによるカリフォルニア州の財政難の影響で、UCは今年度6億3200万ドルの予算削減を余儀なくされます。アドミッションスタッフの確保は今後も難しく、ある程度はテストに頼らざるを得ないというのが実情です。とは言え、アドミッ ションの成績評価において、高校の成績が最も重要であることに変わりはありません。高校にAP(Advanced Placement)やIB(International Baccalaureate)など、 難度の高いコースがある場合は、可能な範囲で挑戦することを勧めます。

(2020年6月16日号掲載)

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