アメリカの大学入学審査のケーススタディー

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アメリカの大学に進学する際に、必ずお世話になるのがアドミッション・オフィスです。ここが入学審査やファイナンシャルエイドの判定などを行う部署であることはよく知られていますが、入学審査の具体的なプロセスについてはあまり知られていません。今回は、デンバー大学(DU)で実際に行われた合否判定を基に、アドミッション・オフィスでどのように入学審査が行われているのかを考察します。
 
DUは、コロラド州デンバーにある私立の総合大学です。学部学生数5000人程度と比較的小規模ながら、ビジネスや工学系の専攻も充実しています。デンバーは西部有数のグローバル都市であり、年間晴天日数300日など住みやすい街として発展しています。
 
2016年秋にDUに進学した学生の、高校の成績の平均値はこのようになっています。

【DU入学者の平均値】
・GPA(Unweighted):3.77
・SAT(1600点満点):1236
・ACT(36点満点):28
 
アメリカの大学は、成績やテストのスコアだけで合否を決めるわけではなく、それはDUの場合も同じです。大学が目指す理想の学生像を実現するために、さまざまな学生を受け入れます。実際に合格した学生、不合格になった学生の事例を見てみましょう。

合格した学生の例

【学生①(合格)】
・GPA:3.15
・SAT:1280
・上昇傾向の成績、魅力的な推薦状学生①(合格)は、学校の成績が低めですが、11年生になって大きく成績を伸ばしたことが高く評価されました。また、エッセイや推薦状から誠実で思いやりに溢れた人となりが感じられました。
 
【学生②(合格)】
・GPA:2.84
・SAT:1200
・キャンパス訪問、DUが本命学生②も、成績はあまり良くありませんが、成績向上に向けてたゆまぬ努力を重ねてきたことが推薦状から感じ取れました。また、常に冷静で、周りから信頼されるリーダーであることも、高く評価されました。さらに、DUが本命であることが明確に示されていたことも重視されました。
 
【学生③(合格)】
・GPA:3.8
・ACT:18
・英語が母国語ではない、やる気がある学生③は、アプリケーションから大学で学ぶことへの意欲が強く感じられたことが、高く評価されました。テストスコアがかなり低いですが、高校の成績と、海外から移住して、英語が母国語でないことが考慮されました。

不合格の学生の例

【学生④(不合格)】
・GPA:3.78
・SAT:1330
・下降傾向の成績学生④は、成績やテストスコアは決して低くないのですが、11年生の成績が大きく下がったことから、大学進学後の学習意欲に問題があると判断されました。
 
【学生⑤(不合格)】
・GPA:3.12
・ACT:36
・高校の成績に複数のDとF学生⑤は、ACTで満点を取るほどの高い学力を有していますが、高校の成績に数多くのCに加えて、DやFも複数あるなど学習への取り組み姿勢に大きな問題があります。また、その低成績の理由がアプリケーションで全く説明されていないことから、リスクの高い学生と判断されました。

経済状況が合否に影響する場合

DUの学生の83%がニードベースまたはメリットベースの奨学金を得て進学しています。しっかりした奨学金制度を有する大学ですが、合格者の下位25%については経済状況も考慮されます。つまり、ボーダーラインの学生にとっては、ファイナンシャルニードの有無が合否に影響する可能性があるのです。
 
【学生⑥(不合格)】
・GPA:3.14
・SAT:1250
・EFC:1万4000ドル
 
【学生⑦(合格)】
・GPA:3.08
・ACT:28
・ファイナンシャルエイド不要
 
どちらもボーダーラインの学生ですが、合否を分けたのは経済状況でした。学生⑥はEFC(家庭で負担可能な学費)が1万4000ドルしかなく、この学生を合格させると、DUはニードベースの奨学金として年間3万3000ドルを負担することになります。一方、学生⑦はファイナンシャルエイドが不要であることをアプリケーションで示しているため、大学が学費を負担する必要がありません。学費の差が合否に表れました。 
 
(2017年8月1日号掲載)

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