(2026年3月号掲載)
アメリカの大学のアドミッションは常に変化し続け、10年前の常識が今では全く当てはまらないことが多々あります。大学が受験生に対して、自己紹介動画を提出することを促すようになったのも最近の傾向です。University of Chicagoが2018年にテスト・オプショナル(アドミッションでACT/SATのスコア提出を義務付けない)を導入した際、アドミッションで2分以内の自己紹介動画を提出できるようにしたのが始まりです。90~120秒程度の自己紹介動画の提出を可能にした大学が、ここ2、3年で一気に増えました。
自己紹介動画を導入している大学の例
● Brown University(RI)
● University of Chicago(IL)
● Washington University in St. Louis(MO)
● Tufts University(MA)
● Bowdoin College(ME)
● Hamilton College(NY)
● Wake Forest University(NC)
● Rice University(TX)
生成AI普及との関連性
自己紹介動画(Video Introduction)の導入が加速している理由の一つとして、生成AIの普及が挙げられます。提出された素晴らしいエッセイが、受験生自身の思考や文章力によるものか、AIによるものかの判別が、年々難しくなっています。学生のエッセイが過度に洗練され、本人の生の姿が見えにくくなったと大学のアドミッションは強く感じています。動画は、話し方、表情、熱量などAIでは代替しにくい「本人の生の姿」を瞬時に判断できるため、AI対策としての補完機能が期待できます。
ホリスティック・レビューの深化
自己紹介動画が増えた理由は、アメリカの大学が伝統的に行っている「ホリスティック・レビュー(総合的評価)」で、動画が効率的なツールとの認識が広まったことも挙げられます。
大学は、受験生の「人となり」をより深く知りたいと考えています。動画から、学生が有する自信や謙虚さ、ユーモア、コミュニケーションなど、文面からは伝わらないソフトスキルが評価できます。大学が学生の「人となり」を知る手段として、かつては卒業生によるインタビュー(面接)が主流でした。しかし、志願者が急増している大学では、全員に面接枠を確保するのが物理的に難しく、そこでインタビューの代わりに動画を利用する大学が出てきました。動画なら、アドミッションは人や時間の制約を受けずに、どの受験生に対しても「擬似的な面接」を行うことが可能になります。Brown Universityは、22年にインタビューを完全に廃止し、動画提出のみに切り替えました。
大学の動画の評価
動画は受験生評価の主軸ではないので、動画だけで合否が決まることはありません。ただし、提出する動画によって、学生の評価が上下することはあります。
大学が動画で評価する重要なポイントは、「本人らしさ」と一貫性です。エッセイで示されている学生の価値観と矛盾がないか、エッセイで示されている活動内容と話すときの熱量が釣り合っているかなど、動画を見て、「この学生はエッセイで描かれている人物通りだな」と納得できるかどうかが重要です。
コミュニケーションも重要な評価ポイントですが、求められるのはYouTuber的な表現力ではなく、相手に伝えようとする姿勢です。思考のプロセスがしっかりしている動画は、プラスの評価につながります。英語が多少拙くても問題にはなりません。伝えようという意欲が感じられること、自分の知的好奇心や内省の深さが伝わることが重要です。
一方、心がこもっていない表現(丸暗記で棒読み)、不自然な言い回し(自分で書いていない原稿)、過剰な演出などは、評価を下げることにつながるので避けるべきです。
大学別の動画攻略法
難関大学を攻略するには、それぞれの大学の動画の評価軸を攻略する必要があります。例えば、University of Chicagoはユニークな動画が評価され、Brown Universityでは真摯な学習姿勢が評価されるなど、同じ「動画提出」でも思想が異なります。つまり、同じ撮り方でも、片方の大学ではプラス、もう片方ではミスマッチになる可能性があるのです。大学の意図を理解して動画を作成することをお勧めします。
(2026年3月号掲載)
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