
(2026年3月号掲載)
タイトな日程で不便な在外邦人の投票
総務省は、今回の衆院選の期日前投票者数が2701万人を超え国政選挙で過去最多と発表した。
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今回の衆院選については、2月の選挙という日程にはさまざまな批判があったが、結果的に56%台という高い投票率となった。これは、有権者が国の方向を決める選挙に高い関心を寄せたことを物語っている。速報によれば、在外の投票率も大きく増えた。前回の総選挙の投票率(在外投票の登録をしている人の中で投票した人の率)は約19%であったのに対して、今回は約28%であったという。率で言えば、数字は大きく改善しており、関心が高かったことが伺える。
しかしながら、改善したとはいえ、在外選挙の投票率は決して高いとは言えない。そもそも18歳以上の在外邦人は100万人を超える中で、選挙人登録をしている人は10%前後の約10万人であり、その28%ということは対象となる日本人の3%弱しか投票ができていない。制度としては、やはり機能しているとは言いがたい。
それにしても、タイトな日程であったが、関係官庁の尽力により多くの場合は週末を含む投票日数を確保して実施ができている。投票率の向上の背景には各在外公館ご努力があったことは間違いないのであって、頭の下がる思いがする。一方で、郵送投票については実際に困難があった。解散は1月23日で、公示は27日であったが、私の場合、そのはるか前の1月15日に「解散風」を読んで投票用紙の請求を投函したが、投票用紙が到着したのは選挙後の2月9日であり、投票の権利行使はできなかった。ちなみに、選挙管理委員会が投票用紙を発送したのは2月4日であったようだ。一説によると中央選管が投票用紙を手配するのに時間がかかったということであり、誰かが責められる問題ではないようだ。
こうした問題の改善策としてはネット投票が理想だ。だが、その前でも、例えば転出前の選挙区の選挙管理委員会と1往復半の郵送のやり取りをするはやめられないだろうか。例えば、投票用紙は定型のものを事前配布とし、在外公館に送付して投票箱のものと一緒に外交ルートで日本に送るなど、実務の流れの見直しはできないものかと思う。
日本国外に新しく小選挙区の設立を
さらに提案したいのは、在外の選挙区を設けて在外邦人の代表を国会に送るという考え方だ。最近の情勢を考えると、これには選挙制度だけではない切実な理由がある。在外邦人として母国の方向性を考えて決定に参加するだけでなく、日本国内において在外邦人に関係する政策が揺れ始めている中、代表を送る必要が出てきたからだ。他でもない「外国人問題」による混乱に対処するためだ。
例えば、高齢になった在米邦人が本帰国したとする。その場合に、日本の安い健康保険をいきなり使うのはズルいなどという声が国内では出ている。これは全くの誤解であり、健康保険は積み立てるのではなく相互の助け合いだ。日本に帰国して国保などに入ることには何ら恥じる必要はない。こうした主張については、何としても在外代表を国会に送ることで公の席で論戦をすることが必要だ。本帰国に関して言えば、円安を受けて税制の運用が厳しくなっているようだが、これも制度をどうするかの議論が必要だ。
また、帰化に至るまでに10年間日本に在住期間を設ける法律が検討されているが、必要に迫られて一時期アメリカに帰化し国籍を放棄していた人が、日本国籍に戻る際にも「10年」などという期間を適用されてはたまらない。さらに言えば、出生届が遅れて日本国籍が得られなかった日本人のお子さんが、日本の大学に進学する場合に、現在検討されている外国人向けの高い授業料が適用されるというのも困る。
一般的に外交というのは相互主義で成り立っている。日本が外国人に厳しくすれば、報復を受けるのは在外邦人ということもある。こうした点は、問題自体が日本国内では全く知られていない中では、国会に代表を送ることが最も効果的であるし、今はその時期であると思う。
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