(2026年7月号掲載)
生成AIの発展により、「将来なくなる仕事」と「これからも必要とされる仕事」が盛んに議論されています。その中で、意外にも高い需要が続くと考えられている職業の一つが旅客機や貨物機など航空機のパイロットです。
世界的な航空需要の拡大やベテランパイロットの退職により、パイロットの需要は、これまで以上に高まると予測されています。Boeingの最新市場予測(2025–44)によると、世界における民間航空機の運航規模は倍増し、今後20年間で約66万人の新規パイロットが必要になるとされています。北米市場だけでも約13万人のパイロット不足になると言われています。
多くの専門家は、旅客機の操縦席から人間が完全にいなくなる未来は、少なくとも当面は現実的ではないと考えています。安全管理や緊急時の判断、乗客の命を預かる責任などを考えると、高度な訓練を受けたパイロットの存在は今後も欠かせないでしょう。
アメリカで民間航空会社の商業パイロットになるには、大きく分けて二つのアプローチがあります。
4年制大学で航空学(Aviation)を専攻する
最も代表的な方法は、大学の航空学部(Aviation)に進学することです。連邦航空局(FAA)の認可を受けた大学の航空学部に入学し、学位の取得とフライト訓練(ライセンス取得)を同時に進める王道のルートです。
このルートでは、大学で航空理論や航空法、気象学、安全管理などを学びながら、提携飛行訓練施設でフライト訓練を受けます。卒業時には学士号と複数の操縦資格を取得できる場合が多く、航空会社への就職を目指しやすい環境が整っています。
通常、ライセンスの取得には1500時間以上の飛行経験が必要です。しかし、FAAの認可を受けた大学で航空学の学位を取得すると、これが1000時間に短縮されます。
このように、航空学の学位を取得するルートはメリットが大きいですが、経済的な負担が大きいので、必ずしも万人にお薦めできる方法ではありません。通常の大学授業料に加えて、実機を飛ばすための「フライト訓練費用(FlightFees)」が上乗せされるからです。
航空学を学べるアメリカの主な大学
・Embry-Riddle Aeronautical University(Daytona Beach, FL / Prescott, AZ)
・Purdue University(West Lafayette, IN)
・Western Michigan University(Kalamazoo, MI)
・University of North Dakota(Grand Forks, ND)
一般大学に通いながら、フライトスクールで並行して学ぶ
もう一つの方法は、大学に通いながら民間のフライトスクールでフライト訓練を受けるルートです。大学で好きな専攻を学びながら、週末や長期休暇を利用してフライト訓練を進めます。
このルートでは、大学の授業料と飛行訓練費用を完全に切り離せるため、高額の奨学金をオファーしてくれた大学や、安価なコミュニティーカレッジに進学すれば学費が抑えられます。また、自分のペースで訓練を組めるため、予算に合わせた調整が可能となります。
一刻も早く、かつ費用を抑えてエアラインに就職したいなら、フライトスクール経由は理にかなっているので、近年はこのルートを選ぶ学生も増えています。航空以外の専門分野を大学で専攻すれば、万が一パイロットの道を断念せざるを得なくなった際のリスクヘッジにもなります。
このルートのデメリットとして、まずは学業と訓練の両立の難しさが挙げられます。大学の課題やテストをこなしながら、フライトスクールのスケジュールを管理するのは、強きょうじん靭な精神力と自己管理能力が求められます。また、前述の1500時間の壁を自力でクリアする必要があり、エアライン就職までの期間が長くかかる傾向があるのもデメリットと言えます。ただし、フライトインストラクターとして働き、お金を稼ぎながら1500時間を貯めることができ、その場合、費用は大幅に節約できます。
AI時代だからこそ、「人間にしかできない判断」が求められる職業の価値は高まっています。パイロットはその代表例の一つです。責任の重さや費用面の課題も理解した上で挑戦すれば、パイロットは大きなやりがいと可能性を秘めた職業と言えるでしょう。
(2026年7月号掲載)
ライトハウスCA版7月号の電子版はこちらから
ライトハウスCA版7月号の目次はこちらから










