アメリカの大学特有の基金Endowmentの仕組み

大学フェア2026秋オンライン

(2026年11月号掲載)

University of Oregonは工学部を新設するため、NIKEの共同創業者であり同大の卒業生でもあるフィル・ナイト氏から10億ドルの寄付を受けることになりました。同大によると、公立の総合大学に対する寄付としては史上最高額だそうです。このように、アメリカの大学は卒業生などから多くの寄付を受け、その多くが大学基金(Endowment)に組み込まれます。大学基金は、長期的に運用しながら運用益を大学の日常的な運営費に還元する永久口座のような役割を果たしています。

大学基金が大学にもたらす価値

大学基金が大学にもたらす価値は、次の5点に集約されます。

①永続的な資金源
大学基金は原則として元本に手を付けず、投資運用益を大学の運用に使用します。基金が大きければ授業料に依存しない経営ができ、経営基盤が揺るぎません。また、安定したキャッシュフローが見込めるため、長期的な研究プロジェクトや施設投資が可能になります。

②Need-Blindの確保
大学基金が大きい大学は、家庭の経済状況に関わらず優秀な学生を合格させ、必要な学費を奨学金で補うNeed-Blindのアドミッションを行えます。世界中から優秀な学生を集めることは、大学の価値向上に直結します。

③スター教授・研究者の招聘
優秀な研究者や教授を獲得する強力なツールが「冠教授職(Endowed Chair)」です。基金で特定の教授の給与や研究費、研究室の維持費を保証します。高額な報酬と潤沢な研究費で、ノーベル賞級の研究者や世界トップクラスの教授陣を引き抜くことが可能になります。

④大学ランキングと格付け
大学基金の規模は、格付け機構(S&Pなど)の債券格付けに直結します。格付けが高いほど、キャンパスの建設や設備投資の際に低金利で資金を調達できます。基金の規模自体が、大学の権威と歴史の長さを示す象徴となるのです。

⑤資金とインフラの自己調達力
政府の助成金は競争が激しく、政権によって予算が左右されるリスクがあります。ですが、基金があれば、自前で先端技術設備を素早く導入し、他校に先駆けて新しい研究分野を開拓できます。 

つまり、「高額な大学基金」→「優秀な学生・教授の獲得」→「高い研究成果・評判」→「卒業生の成功とさらなる寄付」→「大学基金の増大」という好循環が期待できるのです。

運用と支出の仕組み・内訳

大学基金は分散投資で運用します。仮に運用利回りが年間7~10%程度あっても、取り崩すのは元本の4~5%程度に留め、残りの運用益は元本に組み入れて将来の成長に回します。これにより、インフレによる実質価値の目減りを防ぎ、複利効果で元本自体が雪だるま式に増えていく構造を作るのです。

ただし、ナイト氏のように、大学基金の多くは「〇〇の運営」など用途が寄付者によって限定されています。大学が経営難に陥った際、他用途の補填として自由に使えるわけではありません。

また、学生にとっては、大学全体の基金額より、その金額を学生数で割った「学生一人当たりの基金額」が重要でしょう。一人当たりの基金額が大きいことは、学生がより多くの大学のリソースを活用できることを意味します。

HarvardやStanfordなど研究系の大学では基金の運用益の多くが大学院や研究に投じられる一方、WilliamsやPomonaなどリベラルアーツカレッジでは学部生のために使われます。潤沢な基金を有するリベラルアーツカレッジが、アメリカの学部教育の最高峰と言われる理由は、この資金力にあります。

(2026年11月号掲載)

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