
(2025年12月号掲載)
アメリカのデジタルサービスなしでは立ち行かない日本
2026年のWBCは日本、プエルトリコ、アメリカで開催され、準決勝と決勝はフロリダで行われる。
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メジャーリーグでの日本人選手の活躍が話題になっているが、彼らを含めたオール日本のベストメンバーを集めて戦う「WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)」が2026年春に迫ってきた。日本ではもちろん、このWBCへの関心は高いのだが、その日本国内におけるテレビの放映権がアメリカのNetflixに買い占められてしまった。
全世界一律というのなら理解できるが、アメリカではFOXが中継するのでNetflixの契約は日本における国別の放映権としてであるという。つまり、日本国内ではNetflixの会員にならないとWBCの中継は見られないということになる。具体的には、放映権が高騰する中で、日本の地上波連合が価格で負けたというのだ。見方を変えれば、日本の多くの企業がテレビのCM枠を買うための宣伝費を縮小している中で、Netflixの有償会員を集めるビジネスの方が上回ったということだ。
問題はなぜそれが外国資本なのかということだ。WBCを見たい人を集めて料金を取り、ストリーミング配信する企業を日本が作って運営すればいいのだが、そうではなくて言葉は悪いが外資が売上を「かっさらって」いくのを見ているだけというのは奇妙としかいえない。実は、このように「日本国内における日本国内向けのサービス」なのに、実態は外国資本にカネが流れてしまうというのは、極めて大規模に起きていることだ。いわゆるデジタル赤字がこれに当たる。
例えば、日本人の生活になくてはならないスマホの場合、OS(基本ソフト)もSNSをはじめとした多くのアプリなども、その多くは外国製だ。以前はハードだけは日本製も出回っていたが、今はそれもアメリカの設計で中国などで製造されたものが多くなった。スマホの使途の中で多くの時間を占める動画配信サービスもそうだ。日本人のクリエーターが日本語で作って主として日本国内向けに配信する動画も、一旦外国企業のサーバーに格納されて、売上もそちらに行ってしまう。
日本の企業が作った製品を日本国内向けに売るEC(電子商取引)サイトもアメリカの巨大資本が日本に進出しており、各地に大きな倉庫を立てて大きなシェアを抑えられている。こうしたECの場合は、売り上げは全て海外法人に発生する。日本法人はサービス料を受け取るだけだ。したがって、日本の税務当局はこうした外資への課税に苦労している。
最大の問題は、クラウドのサービスだ。大小の企業だけでなく、各地方自治体から国の政府機関に至るまで、膨大なデータが主としてアメリカ企業のサーバーに格納されている。こちらは、停電やケーブルの故障などを想定した危機管理から、日本国内にデータセンターを設置するような動きもあるが、いずれにしても外資の運営であり、サービスの代金は外国に流れていく。
日本経済を圧迫するデジタル赤字
こうした形で国外に流出する「デジタル赤字」は、24年には約6兆円に達しており、10兆円を超えるのは時間の問題だと言われている。これは、エネルギーの購入と並んで国際収支を悪化させる原因ともなっており、円安の要因とも言える。数年前から政府は対策に乗り出しているが、大きく税金を取るというのはなかなか難しいようだ。また、日本のクラウドを使う動きもあるが、セキュリティーの問題でどうしても外資の大手が優先されてしまうようだ。
問題は過去30年にわたって、日本国内でデジタルを使った改革をしようとすると、古い勢力に潰されてきた歴史にある。検索エンジンは違法とされて国内勢は撤退した。大規模なECも国内勢は相変わらず既存店舗との提携というスタイルを強いられている。それ以前の問題として、コンピューター技術者を「潰しの効かない専門職」として社会的に冷遇してきた歴史もある。こうした負の歴史を清算して、自前のデジタルで生産性のある社会を実現できるかは、高市政権の大きな課題であると思う。
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