突如、話題になり始めた「外国人問題」

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冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点:米政治ジャーナリストの冷泉彰彦が、日米の政治や社会状況を独自の視点から鋭く分析! 日米の課題や私たち在米邦人の果たす役割について、わかりやすく解説する連載コラム

(2025年10月号掲載)

あらゆる職場で外国人が増え続ける理由

冷泉コラム_2025年10月号(突如、話題になり始めた「外国人問題」)

2024年末、日本の在留外国人は376万8977人。また、24年の外国人観光客は約3687万人だった。

日本では「外国人問題」が急に話題になっている。具体的には、「国は日本人より外国人を優遇している」とか「このままでは、昔の日本ではなくなってしまう」という感覚であり、一言で言えば、ここは日本なのにどうして外国人が増えたのかという「違和感」のようだ。一旦気になり始めるとどうしても気になるようで、日本の雰囲気は一気に変わった。では、日本ではどうして外国人が目立つようになったのか、その経緯と実情を考えてみたい。
 
まず、大都市で目立つのはコンビニや居酒屋の店員に外国人が増えたことだ。これは都市圏における人手不足が主な原因だが、もっと具体的に言えば外国人の方が現場への適応力があるからだ。例えば、残業やシフトの問題、そして業務マニュアルを守るという問題で、外国人労働者は自己の権利を主張する代わり、契約したことは守る。
 
一方で、日本人の場合は甘えがあったり不満が鬱屈したり雇用主としては扱いにくいという。また今でも深刻なカスハラについては、カタカナ名前の名札を付けていると、なぜかターゲットにならないという問題もあるようだ。さらに人手不足が激しいのが、農業や建設業の現場だ。こちらは、外国人の技能実習制度を前提にしないと、多くの現場で仕事が回らない状況である。一方で、日本の著名な企業の経営者や管理職として外国人が雇われるというケースも増えてきた。これは、外国人が経営権を奪って日本企業を乗っ取るというのではなく、日本の株主の側が「日本人にはできない改革」を委ねるために外国人の経営者がスカウトされるという場合が多い。セブン&アイが、祖業のイトーヨーカ堂を売却するとか、かつての日産が下請け業者との関係を整理するなどの場合に、日本人のトップだとどうしても義理人情に縛られて前へ進めない。そこで、外国人経営者を招いて冷徹な判断をさせるというわけだ。

留学生や外国人観光客なしでは立ち行かない現状

次に、特に大学院で、外国からの留学生が非常に多くなっており、学費免除に加えて生活費が支給されるなど、厚遇を受けているとして批判の的となっている。留学生が日本人より厚遇されているというのは事実誤認だが、確かに数は増えている。これは、日本社会が修士号や博士号を持つ人材を正当に評価しないことと、経済的な理由から日本の若者が大学院を目指さなくなっているからだ。一方で、大学としては優秀な研究者の卵を迎え入れて大学の研究レベルを保つことは必要不可欠であり、日本人が来ないのなら留学生に頼るしかないのである。
 
外国人観光客が増え過ぎて、地域住民が迷惑するという「オーバーツーリズム」も問題になっている。けれども、製造業が衰退し、金融やソフトウェアの競争力はいまだに追いつかない中では、日本が観光を主要産業にするというのは必然だ。外国人観光客の購買力に期待する観光業は、すでに日本経済の大きな部分を占めるに至っている。問題は、日本のマナーやルールを観光客に説明する仕組みが弱いこと、そして経済的なメリットを地域社会に還元する仕組みがないことなど、制度的な点にあると考えるべきだろう。
 
つまり、日本の社会は人手不足だけでなく、さまざまな理由から外国人の労働力を必要としており、また、観光産業は外国人の購買力に依存する構造がある。長い間、日本人は「おもてなし」の姿勢や「優しさ」から外国人を許容していたが、さすがにそれでは我慢ができないレベルに来たということのようだ。景気後退、物価高、少子高齢化などに対して、必死で努力している自分たちを横目に、外国人たちが円安メリットを享受している、そのことにある瞬間から違和感が否定できなくなったのだ。こうした風潮に対しては、在外の日本人がこれまで積み重ねてきたように、日本国内でも異文化理解、異文化コミュニケーションが習得できる仕組みを作ることが何としても必要だ。善意だけでは足りない部分を補う時期が来たということだ。

冷泉彰彦

冷泉彰彦
れいぜい・あきひこ◎東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒業。福武書店、ベルリッツ・インターナショナル社、ラトガース大学講師を歴任後、プリンストン日本語学校高等部主任。メールマガジンJMMに「FROM911、USAレポート」、『Newsweek日本版』公式HPにブログを寄稿中
※このページは「ライトハウス・カリフォルニア版 2025年10月号」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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