
(2026年4月号掲載)
安全対策として極めて効果的なホームドア
国土交通省は2030年度までにホームドアの設置を全国4000カ所に増やすことを目標としている。
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日本の大都市では、鉄道のホームドア設置が進められており、特に東京や大阪の地下鉄や私鉄とJRの主要駅では100%設置となるのは時間の問題となっている。日本の場合は、鉄道への飛び込み自殺が流行したイヤな時代があったことと、酔客が誤って転落するなど、あまりの事故の多さから国の政策として設置が進んでいる。
一方で、アメリカの場合も自殺と事故によるホーム転落死というのは、増加傾向にある。例えば東海岸ではニューヨークの地下鉄におけるホームからの転落事故というのは、自殺、事故に加えて突き落とし犯罪も問題になるなど社会問題化している。けれども、そのニューヨークではホームドアの設置は進んでいない。ワシントン州などでは、小型電車によるライトレールのネットワーク建設が進められているが、ここでもホームドア設置には積極的ではない。例外は最近開通したハワイのライトレールで、日本のメーカーがシステム全体を請け負ったこともあり、多くの駅に設置されている。
日本の場合に話を戻すと、ホームドアの効果は素晴らしく、設置が完了した駅では転落事故というのは、ほぼゼロにすることができている。ヨーロッパや、アジア各国では日本以上に設置の進んだ国もある中で、アメリカの鉄道事業者や州政府などもその効果については理解しているようだ。例えば、LAの地下鉄では、転落防止の黄色い柵を電車の最前部や連結部に設置しており、さらにホームドアを設置する構想も話題にはなっているが、現時点では設置への動きは進んでいない。
アメリカならではのホームドアが普及しない理由
どうして設置が進まないのかというとさまざまな理由がある。まず、日本の場合はホームドア設置に伴って車両の編成を統一する。その線を走る電車は朝から晩まで同じ8両なら8両の編成にし、しかも1両あたりのドアの数と位置も同じにする。その上で運転手が停止位置を正確に守ればホームドアと車両のドアがズレずに済む。ところがアメリカの特に古い地下鉄や郊外列車の場合は、さまざまな車両が混在しているし、編成も一定していないケースが多い。乗車位置に正確に停車させるという習慣も、そして恐らく技術もない。これでは、扉の開く位置を固定したタイプのホームドアは使えない。
その他にも、アメリカでは、真ん中の車両に車掌が乗務して、駅によっては降りて安全点検をしたりしなかったりという場合があり、その場所のドアの開け閉めを考えるとさらに設計は複雑になる。日本の場合は、ハイテクを駆使したワンマン運転が広まっているが、組合の強いアメリカではこれも非現実的だ。
一番の理由は、実はホームドアの機構は大変に重たいということだ。通常タイプの場合、開扉部分二つで1トンもある。歴史の古い地下鉄をはじめ、既存のプラットホームの上にホームドアを載せたら潰れてしまって困るので、ホームの構造を根本から強化しないと設置は不可能である。そうなると設置の費用は高額となってしまう。
その一方で、冬の厳しい地方では、せっかくホームドアを設置するのならホーム全体をガラスで覆い、天井まで届く大きなドアを開閉する、フルハイト(またはフルスクリーン)型を検討しているようだ。日本では東京の南北線やJR大阪駅うめきたエリア新ホームにあるタイプだが、この形式になるとコストはさらに高価なものになる。
問題は重さ対策を含めたコスト、そして車両のドア位置を数も含めて統一できないといった点にあるわけだが、日本ではこうした問題に対処するために、新しいタイプのホームドアが開発されている。例えば列車がいない時には天井から横に張ったロープが降りてくるタイプは軽量だし、ドアの位置や数に柔軟に対応できる。また、最も新しいものとしては「ふすま」のように開口部分を自由自在に変化させるタイプも出てきた。転落事故防止の切り札であるホームドア、ぜひ、アメリカでも普及してほしいものだ。
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