
(2026年5月号掲載)
GDP、国家債務、中東情勢
1ドル150円は適正か?
2026年4月、日銀政策金利は0.75%程度。連邦資金金利は3.50〜3.75%と両者には差がある。
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ここ数年、円安傾向が定着する中で、高市政権が発足するとさらに円安が若干進んで現在は1ドルが160円前後という水準になっている。在米邦人の立場からすると、アメリカで稼いだドルを日本で使う場合には、有利になる。一方で、日本から観光などで家族や友人を呼ぶとか、日本人がアメリカに留学する場合には、物価高にドル高が重なることで、明らかに困難がある。
それはともかく、では一体このドル円のレートはどの程度が適正なのだろうか。将来の為替レートの変動は、専門家にも予想が難しいのは事実だが、現在の日本円を取り巻く環境を読者の皆さんと考えていくことは重要だと思い、論点を整理しておくことにしたい。
まず、為替相場がどのように決定されるかであるが、国際間の通貨の取引というのは、毎日、途方もないスケールで起こる。従って、急に投資が拡大したからドル買いが増えたなどという「実需」によって変動する幅は限られている。その一方で、世界規模で考えた場合には、投機資金、つまりFXのレバレッジ投資などの資金が大きく、市場の雰囲気によって相場が動くことが多い。その上で、数カ月単位の長い期間で考えれば、政策や国力など基礎的な経済の動きを通貨は反映してゆく。
この点で考えると、残念ながら現在の日本経済の実力を考えると、ドル円の相場が150円程度というのは間違いないようだ。日本は年間GDPの250%の国家債務を背負っており、間違いなく先進国中で最悪である。ただし、国の借金である国債の残高に見合う金額の個人の金融資産があり、政府としてはマイナスでも、国としてはプラス・マイナスがゼロとみなされてきた。けれども、消費に加えて相続税の増税効果などがあることで、個人金融資産は減りつつある。反対に、国家債務はジリジリと拡大している中では、徐々に国債を国際市場で売り始めている。その結果としての150円から160円という幅は、どうやら甘んじて受けるしかなさそうだ。
これを超える大幅な円安も円高も日本経済にとっては大きな痛みとなる危険がある。まず、中東情勢から石油価格が高騰している中では、これ以上の円安になると日本国内の物価がさらに上がって、国民生活が苦しくなる。政府は補助金を出すだろうが、行き過ぎると国の借金が増えることを嫌って、国際市場で円がさらに下がる。
円高、円安
どちらにもリスクあり
一方で、円高になると日本の多国籍企業が海外で稼いだ売上利益が円建てでは縮小してしまう。この点に関しては、3月決算の終わったばかりの現時点では当面の影響は少し軽くなっている。従って物価対策を考えると、もう少しだけ円高に振っても良いのだが、これがなかなか容易ではない。また、仮に大幅な円高になると、日本の不動産や株に投資している海外マネーが「利益を確定しよう」と売りに出て、特に不動産のバブルが弾ける危険もある。また、円高が進むと外国人観光客が一気に減少して、好景気に湧く観光産業にはダメージになるであろう。
日本への投資の問題については、円安が暴走した場合には今度は特に不動産が「損切りの投げ売り」に遭う危険も出てくる。アメリカでは一部のアナリストが、円安が暴走した場合に日本発の世界恐慌を警戒すべきと言っている。事態がそこまで切迫しているとは思わないが、仮に円や国債が暴落し、資産を海外に逃避させる動きなどが出てくると危険水域に入るのは間違いない。物価も調整不能になるかもしれない。そう考えると、ドル円の相場は、当面は140円から160円の幅の間に入ってくれているのが望ましく、これを外れると危険である。
高市政権には日米の政府間の協力を通じて、この幅の中にドル円相場を収めるように努力していただきたいが、実際問題として、見えないところで努力することでこの間、ドル円のレートを安定化させていると言っていいだろう。3月の日米首脳外交では、実はこの点も協議がされていたと考える。
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