日本でも関心の高まる「米本土皆既日食」

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冷泉彰彦のアメリカの視点xニッポンの視点:米政治ジャーナリストの冷泉彰彦が、日米の政治や社会状況を独自の視点から鋭く分析! 日米の課題や私たち在米邦人の果たす役割について、わかりやすく解説する連載コラム

8月21日、アメリカのほとんどの地域が日食に

皆既日食

今年2017年の8月21日(月)、お昼前後にアメリカ本土で皆既日食が見られる。日食と言っても、一部が欠けるようなものではなく、ホンモノの皆既日食、つまり太陽の前に月が完全に被さって、昼なのに真っ暗になるという現象だ。それも南洋の海上とかではなくアメリカの本土で起こるのだから大変だ。
 
具体的には、まず当日、北アメリカの全域では少なくともかなりの「日食」となって、太陽が大きく欠ける様子が見られる。その中で、皆既帯といわれる狭い帯状の地域の中では、太陽が完全に月に隠されて真っ暗になる「皆既」という状態になる。その際には青空が灰色となって、真っ黒な太陽のまわりに炎のようなプロミネンスやコロナが見える。
 
この皆既帯は、オレゴン州の北部横断から始まって、アイダホ州を横断。ワイオミング州、ネブラスカ州を通って、カンザス州をかすめ、ミズーリ州、イリノイ州の一部、ケンタッキー州、テネシー州の一部、ノースカロライナ州とジョージア州の一部をかすめて、サウスカロライナ州を抜けて大西洋に出る。
 
斜め方向であるが、まさに大陸横断というわけで、皆既帯が横断する州ではかなりの部分で皆既になる。ちなみに皆既帯の幅は100キロ程度で、中心線付近では2分半程度皆既状態が継続するが、幅の端の方では一瞬だけになるので、場所を選んで待機していないと観測できない。

皆既日食と聞けば、世界中どこへでも出掛ける日本人

ところで、日本人はこの皆既日食という現象が大好きだ。小中学校の理科の時間で教えるということもあるし、中学や高校になると学校に備えられた望遠鏡で天体観測をしたり、中には天文クラブなどのある学校も多い。全国にあるプラネタリウムでは、美しい星空を再現するだけでなく、天文現象についての講演など知識の普及活動がされているということもある。
 
そんなわけで、地球上のどこであろうと皆既日食が起こると、日本では「観測ツアー」が組まれて天文ファンが大挙して出かけるということが起こる。例えば、16年の3月にはインドネシアで皆既日食が起きたのだが、日本からのツアーが組まれていた。残念ながらこの日は、雨や曇天になって皆既日食が見られた地域は少なかったのだが、それでも一部の薄曇りの地域では観測ができたという。その前の15年の3月にはノルウェー上空から北極にかけて皆既日食が起きたが、この時は陸上では観測できないということから、日本の旅行会社がボーイング737をチャーターして、上空からの観測ツアーを行い、盛況であったという。
 
インドネシアや北極上空まで出かけて行くことを考えると、今回の「北アメリカ大陸横断」というのは画期的で一世一代の事件になる。半年を切った現時点では、多くの「観測ツアー」が募集を行っており、日本では徐々に盛り上がりをみせてきている。もしかしたら、読者の皆さんの友人知人などで天文ファンの人がいたら、この時期にアメリカにやって来て日食を見ようという計画を立てているかもしれない。
 
問題は天候で、この時期の晴天率は高いものの、気圧の谷が来るようなら、場所を移動しなくてはならない。仮に北アメリカ大陸の東西にわたる幅広い地域で晴天が予想されるのであればいいが、雲の出そうな予報の場合は東西に場所をずらして晴れている地域に移動するという作戦が必要になる。
 
皆既帯の通過する各州では、比較的中心線に近い部分で、観察に好適なスポットのリストアップが始まっている。車が止めやすく、見晴らしの良い場所ということで、ズバリこの街のこの駐車場という具合で、当日はそこに相当な観測者が集まることになりそうだ。関心のある方は、そろそろ計画を立てられてはいかがだろうか。その場合だが、真っ暗になるとは言え、前後には太陽を直接見てしまっては目を痛める。濃い着色ガラスを用意するなど、対策には万全を期したい。

冷泉彰彦

冷泉彰彦
れいぜい・あきひこ◎東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒業。福武書店、ベルリッツ・インターナショナル社、ラトガース大学講師を歴任後、プリンストン日本語学校高等部主任。メールマガジンJMMに「FROM911、USAレポート」、『Newsweek日本版』公式HPにブログを寄稿中

 

(2017年4月1日号掲載)
 
※このページは「ライトハウス・ロサンゼルス版 2017年4月1日」号掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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