
(2026年9月号掲載)
10年前よりも被害を抑えられた熊本地震
2016年の地震で被害を受けた熊本城は復旧の真っ只中に再び被災。復旧はさらに長引く見込み。
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2026年7月、熊本県の熊本市から八代市にかけての一帯を激しい地震が襲った。16年に同じ地域で発生した地震から10年を経て、再びマグニチュード7.1という大規模な震災となった。被災された方々に、心よりお見舞いを申し上げたい。
日本からの報道ではショッピングモールにおいて地震後に起きたガス爆発が死亡者を出したことが議論になっている。また大規模な製紙工場で煙突が倒壊して犠牲者が出たのも痛ましい事故であった。人的被害については、こうした事故を含め地震による直接の死者は39名、重軽傷者は354名*とされている。また、猛暑の季節における避難が被災者に大きな負担になっていること、また水道の断水が続いていることなどもあり、当面は被災者の安全な避難が最優先される状況でもある。
その一方で、10年前の地震と比較すると建物等の被害は抑えられている。16年の地震は震度7クラスの揺れが3日間に2回あった一方で、今回26年の地震では10年前より激しい振動が報告されているなど、二つの地震を直接比較することは難しい。
けれども、直接の死者が50名(16年)**、39名(26年)*に対して、家屋の全半壊が4万3148棟(16年)**であったのが、今回は2304棟(26年)*にとどまっている。家屋の全半壊については20分の1となっているのであり、この違いは大きい。古い家屋の多くが16年の地震では被災し、10年後の地震では多くの家屋が耐震建築に置き換わっていたことが被害件数を劇的に減らしたと見てよいであろう。
16年の地震においては、回送中の新幹線が脱線してしまい車両の除去に時間を要した。JR九州はこの事故を重く見て、九州新幹線の全線に徹底的に脱線を防止する「脱線防止ガード」という細長い金具をレールの内側に沿って設置した。今回の地震では線路が断裂するなど、10年前と比較するとより強い揺れに襲われた形跡がある一方で、車両の脱線は避けることができて、営業運転中の編成も全てが安全に停車している。
家屋の強度にしても、新幹線の耐震性能にしても10年間で技術の実用化は確実に進んでいるのは間違いない。気になる事故としては、八代市の市役所庁舎が「震度7に耐える免震構造」で設計されていたのだが、地下の基礎部分にあった免震構造のゴムダンパーが、恐らくは想定を上回る振動のために破損している。こちらも詳細な調査が行われるであろうし、その結果は耐震技術の向上に寄与するであろう。
耐震・免震の技術実用化は日本が中心
犠牲となられた方の人命は戻らないことを考えると責任の所在などを明確化することは大切だ。けれども、10年を経た二つの地震を比較することで、この間の耐震技術の進歩が被害の軽減に寄与したということは、否定できない事実である。
けれども、そこには大きな問題がある。優れた日本の耐震・免震技術であるが、実用化されているのはほぼ日本国内が中心で、他の地震国ではまだ導入されていない。例えば、ここ数カ月だけでもベネズエラでは6月に大震災があり、首都カラカスが被災、また港湾都市ラ・グアイラでは約80%の建物が倒壊するなど大きな被害となった。6300人以上が死亡し、負傷者は6万人以上と言われている。さらに8月にはコロンビアでも大震災があり、大きなビルが倒壊するなどショッキングな映像が飛び込んできている。
両国とも活断層の存在は知られており、日本式の耐震・免震技術が導入されていたら多くの人命が救えたのは間違いない。問題はコストである。アメリカ西海岸を含めて多くの地震国に売り込んでいるものの、日本の耐震・免震技術は「コスト面で見合わない」とされて無視されてきた。この点を何としても突破しなくてはならない。今回の熊本地震を契機に日本では耐震・免震の技術はさらに進歩するだろうが、それを世界に広めていくために知恵を絞り続ける必要がある。
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