レイフ・ファインズ / Ralph Fiennes

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(2025年3月号掲載)

往年の美男子は今や円熟のアーティスト

レイフ・ファインズと成田陽子さん

まず、間違っても彼の名前を「ラルフ・フィエネス」などと発音しないでいただきたい。アイルランド読みで「レイフ・ファインズ」なのだ。キャリア初期の頃は、間違いを本人が必死で訂正していたものの、最近はもう諦めたと苦笑していた。
 
最近は作品賞、主演男優賞など8部門でオスカー候補となって注目されている『Conclave(教皇選挙)』(2024)でバチカンの枢機卿を終始苦悩の表情で熱演。
 
「内側に葛藤を秘め、矛盾を抱く性格の人間を演じるのが好きでね。この枢機卿はまず人間であって聖人ではない。私も13歳までカトリック信者として育ったから少しは理解できる。信仰についての疑問と共に人生を送ってきたのだから。若い頃は完全に役になりきって演技をしたものだが、最近は自分の経験をもとにして役作りをするようになった。そうでないと、あまりにのめり込んで、心身が疲労の極地に落ち込んでしまう。次の役までの間にリカバーする時間が長くかかるようになってしまったし。どちらにしろ、私は定期的に舞台に戻って生の観客に囲まれる刺激を味わわないと、俳優としてのみずみずしさに欠けてくるような気がする」と、リラックスした柔らかい表情で説明してくれた。

『Schindler's List』公開時のレイフ・ファインズと成田陽子さん

『Schindler’s List』公開時のレイフ・ファインズ。シェイクスピア作品など舞台演劇で鍛えた演技力と端正なルックスで注目を集めた。

『Schindler’s List(シンドラーのリスト)』(1993)の猛々しいナチの将校役から『The English Patient(イングリッシュ・ペイシェント)』(1996)の端正な貴族の役など、水も滴る美男子だったファインズ。だが、『Harry Potter(ハリー・ポッター)』シリーズで大悪党のヴォルデモートを演じた頃からルックスに全くこだわらず、薄くなった頭髪には虚栄心のかけらもない。純粋なアーティストの顔になって、まだ62歳だというのに、そのあまりのおじさんルックにこちらの方が戸惑うくらいなのである。
 
カトリック教徒にして芸術家の家に生まれ、6人兄弟の長男として育ち、ロンドンの王立演劇学校で知り合った女優と結婚。その後18歳年上の女優と恋に落ちて離婚し、それからは独身を貫いているものの、2007年にはスキャンダルが飛び出たりと、突然「燃えてしまう」のもロマンチストの彼らしいと思いたい。
 
「買い物は本だけ。読書に目がなく、本のない生活など耐えられないね。それから私は一種のコントロールフリークで、棚に置いてある缶詰などのラベルをそろえないと気が済まないし、家の中も片付いていないと落ち着かない」と自分の性癖を素直に白状するのもほほ笑ましい。

成田陽子

成田陽子
なりた・ようこ◎ゴールデングローブ賞を選ぶハリウッド外国人記者協会に属して30年余の老メンバー。東京生まれ、成蹊大学政経学部卒業。80年代から映画取材を始め、現在はインタビュー、セット訪問などマイペースで励行中。

※このページは「ライトハウス・カリフォルニア版 2025年3月号」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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