(2024年7月号掲載)
色香と気品ある佇まい、まさにジェントルマン
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久しぶりの映画となる『Oh, Canada』(2024)で、リチャード・ギアは死を間近に控えたドキュメンタリー監督を演じている。
「出演の話が来た時、僕は100歳になる父の看護をしていた。亡くなる直前までユーモアを欠かさない美意識のある父だったよ。そんな父の姿を映しながら僕は役作りに専念した。(『American Gigolo(アメリカン・ジゴロ)』(1980)以来)45年ぶりに一緒に働いた監督(ポール・シュレイダー)は撮影プロセスに無駄がない。低予算、短期間のインディー系の映画作りは大好きなんだ。僕の若い頃を演じているジェイコブ・エロルディとは言葉を交わさなかったが、彼は僕の声や動作をじっと観察し、僕の若い頃の映画を熱心に見て研究したそうで、実にうまく仕上げてくれた」
とは、久しぶりのカンヌ国際映画祭でのギアのコメントである。
ギアは現在74歳。2018年に33歳年下のアレハンドラ・シルヴァというスペイン人女性と3度目の結婚をして、まだまだラブラブの睦まじい夫婦仲を披露していた。
『King David(キング・ダビデ 愛と闘いの伝説)』(1985)公開時に撮ったリチャード・ギアとの2ショット。30代半ばながら独特の気品と色気がある。それにしても2人とも若い!
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ギアに初めて会ったのは『The Cotton Club(コットンクラブ)』(1984)の時だったと思う。東部のインテリ家庭に育った生意気なタイプで、ピアノが上手、ヨーロッパの香りが漂う、かなりキザな若手スターだった。不思議なセックスアピールで、前述の『American Gigolo』や『Breathless(ブレスレス)』(1983)といったセックスを前面に出した、当時としてはラジカルな性描写の映画で、ワイルドで自由奔放な若者を演じて注目されていた。
マサチューセッツ大では哲学を専攻し、この頃からチベットや東洋の宗教に対する強い関心が芽生えたようだ。
その後『Pretty Woman(プリティ・ウーマン)』(1990)ではリッチなビジネスマン役で、ほとんど夢の中の王子様のような存在感で独特の気品を漂わせ、ロマンティック・コメディの質を上げたと言われている。
黒澤明監督の『Rhapsody in August(八月の狂詩曲)』(1991)では日米混血のハワイ人の役を与えられ、アジア人のメークをいろいろと必死に試したそうだが、黒澤監督の「君は何もメークせずともしっかり日本人に見えるじゃないか」という一言が、世界のクロサワの一番の思い出だと話してくれたのも懐かしいエピソードだ。
会うたびに深く頭を下げてお辞儀をするのも東洋に畏敬の念を抱いている彼らしく、こちらもしっかりとお辞儀で対応してしまう。

成田陽子
なりた・ようこ◎ゴールデングローブ賞を選ぶハリウッド外国人記者協会に属して30年余の老メンバー。東京生まれ、成蹊大学政経学部卒業。80年代から映画取材を始め、現在はインタビュー、セット訪問などマイペースで励行中。










