トム・ハーディー / Tom Hardy

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(2023年11月号掲載)

バッドボーイな異彩を放つ英国売れっ子俳優

トム・ハーディーと成田陽子さん

2023年9月に46歳になったトム・ハーディーは、野蛮な熱血漢の役が多い。彼自身もとびきりワイルドで、ソウルフルなスターだ。昨今、エディ・レッドメインやベネディクト・カンバーバッチ、トム・ヒドルストンといった英国紳士系のスターがもてはやされる中で、ムキになって悪ガキ行動をしているように見えなくもないが、そういうへそ曲がりなところも大きな魅力である。
 
会見にもヒップホップ歌手というか、町の不良(?)のようなTシャツにカーゴパンツ、作業手袋をベルトにぶら下げ、さらにタトゥー、坊主頭に赤ひげというアンチフォーマルな格好で現れる。話している最中もはめている何個かの銀の指輪を外して、テーブルの上でそれを並べたり、積んだり、何とも落ち着かない。
 
20代の頃、軽度のうつ病に襲われ、アルコールとクラックコカイン中毒に。ある朝、ロンドンのソーホー地区で血と嘔吐に埋もれて発見され、以来、ドラッグをきっぱりやめてクリーンになったというバッドボーイ武勇伝の持ち主。と言っても、両親は小説家と画家という創造性の豊かな家庭に育っている。高名な英国の作家、トーマス・ハーディー(1840~1928)と同じ名前を付けられ、平和な郊外に住んでいたのだが、全寮制の学校で規則を破ってばかりで放校された。さらに車を盗んだり、銃を所持したりで刑務所に送られたものの、一緒に行動した友人が外務省の高官の息子で重刑を逃れたという逸話も。縛られるのが耐えられない反抗児だったのである。貧困家庭からの逃避ではなく、スリルシーカーだったとも言えよう。
 
作品に恵まれ、舞台劇ではオリヴィエ賞を受賞。映画『The Revenant(レヴェナント:蘇えりし者)』(2016)では主演のレオナルド・ディカプリオと共にオスカーにノミネートされた。母国英国の社会問題にも体当りで貢献して「CBE」という騎士の位のすぐ下の勲章まで授与されている。
 
尊敬する俳優がゲイリー・オールドマンというのも微笑ましい。彼もアルコールとドラッグで死に損なったオスカー受賞俳優だ。新作『The Bikeriders(ザ・バイクライダーズ)』(2023)では、伝説のオートバイ乗りを激演。奇妙なアクセントでのセリフ回しが注目されている。「これはコックニーとロシアンのミックス訛り。僕本来のアクセントはブルジョア・ミドルクラスだよ」と、半分ジョークのような返事が返ってきた。

成田陽子

成田陽子
なりた・ようこ◎ゴールデングローブ賞を選ぶハリウッド外国人記者協会に属して30年余の老メンバー。東京生まれ、成蹊大学政経学部卒業。80年代から映画取材を始め、現在はインタビュー、セット訪問などマイペースで励行中。

※このページは「ライトハウス・カリフォルニア版 2023年11月号」掲載の情報を基に作成しています。最新の情報と異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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