(2024年3月号掲載)
『Oppenheimer』でも光るカリスマ的存在感
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Cで始まっている名前だがアイルランド産ゆえ、キリアンと発音する。今や『Oppenheimer(オッペンハイマー)』(2023)の主役でオスカー候補となって、キリアン・マーフィーの名は全世界的に知られるようになった。
1976年5月25日、アイルランドのコークで役人の父親とフランス語教師の母親の下に生まれ、弁護士を目指して大学の法学部に入ったものの司法試験に不合格。それまで我慢していたロックミュージシャンを試し、これもうまくいかず、俳優になったという。
試行錯誤の若者時代、『Breakfast on Pluto(プルートで朝食を)』(2005)ではトランスジェンダーの役を演じ、きれいな女性よりもきれいになって登場。愛国心がひしひしと感じられる佳作『The Wind That Shakes the Barley(麦の穂をゆらす風)』(2006)では1920年代の英国に反抗するゲリラ戦に参加する兄弟の一人を熱演。この2作を見逃していたらぜひ見てほしい。
さて『Oppenheimer』での役作りについては、名うてのインタビュー嫌いゆえ、最近の映画祭でのコメントを紹介しよう。
「演技は大好きだが、話すのは嫌い。(大女優の)ジョアン・ウッドワードが言っていた『セックスと同じ。ただやれば良い、ただしそのことについては話すべきではない』は最高の比喩だよね。オッペンハイマーは野心、狂気、妄想、ナチへの深い嫌悪、高度の知性、カリスマ性を持った複雑な人間だった。僕ら普通の人間には不可解なレベルだから、同様に天才的な監督のクリストファー・ノーランの指導に従順に従った。彼とは『The Dark Knight(ダークナイト)』『Inception(インセプション)』『Dunkirk(ダンケルク)』などで一緒に仕事をしてきたから、彼の創作の才能を徹底的に信頼している。彼の現場は静かでしっかりと整理されているのだが、そこで俳優たちを混乱させて、そこから何かを拾うプロセスをたどるんだ。ロケからロケが続き、忙し過ぎて食事をスキップし、夜は緊張が解けずによく眠れず、その状況から僕は異常なエネルギーを得て、これが役作りに効果的だったと思う。ナチュラルのタバコを使っていたもののチェーンスモーキングはつらかった。ニコチンで茶色くなった指はメークだったがね。さて、これからレッドカーペットやらトーク番組に出なければならないのが一番の苦痛なのだが、契約条項に入っているのでしょうがないね」と諦めた表情を浮かべていたが、どこかで「痛気持ち良さ」を味わっているようにも見えたキリアンであった。

成田陽子
なりた・ようこ◎ゴールデングローブ賞を選ぶハリウッド外国人記者協会に属して30年余の老メンバー。東京生まれ、成蹊大学政経学部卒業。80年代から映画取材を始め、現在はインタビュー、セット訪問などマイペースで励行中。










