(2026年8月号掲載)
「愛」と「熱意」に生きる、フランスの至宝
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フランスの女優、カトリーヌ・ドヌーヴ、マリオン・コティヤール、レア・セドゥ(みなさん全員の顔が浮かびますか?)などなどの中で最も人気があるのはジュリエット・ビノシュに違いない。『The English Patient(イングリッシュ・ペイシェント)』(1996)の看護婦役でオスカー受賞、『Chocolat(ショコラ)』(2001)ではジョニー・デップと共演してオスカー候補に、そして最近では『The Return』(2024)でオデュッセウスの妻、ペネロペの役をパワフルに演じている。
2026年に62歳、独身を貫いているものの、それぞれ違う父親の元に生まれた息子と娘がいる。1996年にアカデミー賞を受賞した際、自宅に持ち帰ったオスカー像に当時3歳の息子がいたずらして、金のメッキを剥がしてしまい、塗り直してほしいと協会に像を持参したそう。
フランスきっての高額ギャラを稼ぐ女優でありながら、日常では地下鉄を利用する、現実に目を向けた生活を送っている。絵画制作(肖像画が人気だそう)、歌手(上手ではないがパワフル)、その上、アーティストの自由を守るため、政治活動家としても奔走中と、誠に忙しい。
「両親が演劇の仕事をしていて、自然に女優のルートをたどった。14歳の時に、画家になろうか、演劇の道に進もうかと悩んでいたら、祖母が、仕事を限定する必要などないでしょう、好きなことを試して、何でもしてごらん、と言ってくれて、周囲がパッと明るくなったのよ。
そしてどんな時も『熱意』を持っていること。60歳を過ぎて思うことは、20歳の時に重要だったことは50歳を過ぎたらあまり意味がなくなるのよね。同じことに執着していたら、それは成長してないわけ。人生は動き回り、変化に自在に応じて、新しい挑戦を続けなくてはだめ。そして生きていること自体が『愛』だということを自覚してほしい」。
新作『Queen at Sea』(2026)でのコメントである。
本作ではアルツハイマーの母を持つ娘の役なのだが、映画のコンセプトについて「病気、加齢にまとわりつく道徳的な理性がぼやけていく過程」と賢く、シンプルに説明してくれた。
ちなみにフランスの女性にしては骨太で、お世辞にもシックと言えない服のセンスの持ち主。映画祭などでトンデモハップンのドレスで現れ、それがまた彼女への親近感を増す効果を上げていると勝手に思うワタクシであります。

成田陽子
なりた・ようこ◎ゴールデングローブ賞を選ぶハリウッド外国人記者協会に属して30年余の老メンバー。東京生まれ、成蹊大学政経学部卒業。80年代から映画取材を始め、現在はインタビュー、セット訪問などマイペースで励行中。










