(2026年3月号掲載)
心に響く、深く静かな声と存在感
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少し前にパナマ運河を訪れた際、ビジターセンターのシアターで見たIMAXドキュメンタリー映画『Panama Canal: A Land Divided – A World United』で、ナレーションをモーガン・フリーマンが担当していた。あの落ち着いた声を聞き、さすがアメリカを代表する存在だなと誇らしく思った。
1937年6月1日生まれの88歳、まだまだ現役で、テレビシリーズ『Special Ops: Lioness(特殊作戦部隊:ライオネス)』(2023〜)のレギュラーを務めている。2008年に交通事故に遭い、左肩から腕まで負傷して、今も左手はポケットに入れたり、手袋をして隠しているのだが、喜ばしいことに「引退」という選択は今のところないようだ。
「もちろん引退は常に念頭にあるのだが、オファーが来て、ギャラはいくら、どこのロケに行く、などの話を聞くと、もう体が先に動いてしまうんだ。まだまだ俳優としての『食欲』が十分に残っている。それに仕事をするのは本当に楽しいからね」と頼もしいコメントをしてくれる。
彼に初めて会ったのは『Glory(グローリー)』(1989)の時。まだ52歳で、精悍なルックスとしなやかな肉体に、すさまじい覇気を覗かせながら、「僕は常にシドニー・ポワチエを自分の鑑として俳優業を続けていきたい。卑近なことにこだわらず、格調を重んじて前進あるのみ、なのだよ」と静かに話していたのを思い出す。
長いこと貧乏のどん底の生活を経て、舞台からハリウッドへとキャリアを積み、3度のオスカーにノミネートされた後、『Million Dollar Baby(ミリオンダラー・ベイビー)』(2004)で、ついにアカデミー助演男優賞を受賞した。
風雪を経てきただけに、シニカルで現実的なビジョンのコメントを吐くのである。例えば2016年のオスカーではノミネートに黒人がゼロでボイコット騒動が起きたが、このことについては、「単に候補になるほどの力を見せられなかっただけ。別に取り立てて騒ぐことはないだろう。いちいち大声で怒鳴るような行動は恥ずかしいことだと思うね」とあのソフトでセクシーな声で言うのであった。
パイロットのライセンスを持ち、仕事のない時は飛行機や船に乗ったり、ゴルフをしたり、クロスワードパズルを楽しんでいるそうだ。

成田陽子
なりた・ようこ◎ゴールデングローブ賞を選ぶハリウッド外国人記者協会に属して30年余の老メンバー。東京生まれ、成蹊大学政経学部卒業。80年代から映画取材を始め、現在はインタビュー、セット訪問などマイペースで励行中。










