(2025年5月号掲載)
知的演技派&おちゃめ、関西弁もいける!
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ボブ・ディランのデビューを描いた『A Complete Unknown(名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN)』(2024)でディランのメンターとなるピート・シーガーを力演したエドワード・ノートンは役作りについて、インテリの彼ならではの哲学を述べている。
「映画を見る時は何も知らずに臨むのが最高だ。以前、僕が見たい映画の宣伝で、クライマックスから俳優の細かい苦心、メークの段取りなどを紹介していて、興味がなくなってしまった。ともかく、ディランは若い頃の僕にとって大きな存在。当時の社会的な背景、キューバ危機や公民権運動などと一体になった青春ドラマだ。観客がその時代を体感するような状態になる。無駄な説明でこの映画の持つマジックを消したくないから、役作りの話などしたくないことを分かってほしい。ディランを神格化したりせず、余計な判断を避け、彼の変幻自在な才能を雄弁に物語り、共感に満ちた映画だと思う」。
ちなみにディラン役のティモシー・シャラメもノートンも吹き替えなしで自分の声で歌っている。
「ティモシーの才能にはたまげた。まるでディランを『Raging Bull(レイジング・ブル)』(1980)のように怒涛の演技で役作りをしてくれた」。『Raging Bull』はロバート・デ・ニーロが体重を60ポンド増やして老ボクサーを熱演し、オスカー主演男優賞をモノにした映画だ。
2025年8月で56歳になるノートンは東部の名門家族の生まれ。イェール大学で演劇を学び、祖父(富豪にして名士)の仕事を手伝うため日本に約1年滞在。そこで関西弁を身に付け、今も会うたびに「おおきに」などと挨拶する。『Primal Fear(真実の行方)』(1996)で衝撃的な映画デビューを果たし、この作品で二重人格の殺人鬼を恐ろしいほど自然に鋭く演じて、たちまちオスカー助演男優賞候補となった。その後もいぶし銀の演技を続け、すでにオスカー候補4回のベテランだが、素顔は憎らしいほどボーイッシュで、加えてずば抜けた頭脳派といえる。
「日本の映画に出たいね。ケン・ワタナベがハリウッドで活躍しているように僕もあっちへ行って働きたい。もし出演作を探してくれたらギャラの10%をあげるから」と提案されたこともあったが、日本の監督の方々、彼の流暢な関西弁を生かして白人インテリのやくざという役などいかがでしょう。
ちなみにボルチモア・オリオールズの熱狂的ファンで、名選手の伝記の編集を買って出たりするほほ笑ましい面も持ち合わせている。

成田陽子
なりた・ようこ◎ゴールデングローブ賞を選ぶハリウッド外国人記者協会に属して30年余の老メンバー。東京生まれ、成蹊大学政経学部卒業。80年代から映画取材を始め、現在はインタビュー、セット訪問などマイペースで励行中。










