最新号特集
歴史を受け継ぎアメリカ社会で活躍する日系人リーダー (2)
フランク・バックレーさん
KTLAテレビプライムニュース・アンカー
1964年生まれ。メリーランド州出身。日本人の母を持つ。87年、南カリフォルニア大学卒。パームスプリングスのKESQ-TVの朝のニュースアンカー、ノースカロライナ州のWXII-TVの週末アンカーを経て、92年、ロサンゼルスのKCALに移籍。98年、香港返還の取材でエミー賞受賞。99年、CNN特派員に。イラク戦争直後には米航空母艦に搭乗し、ペルシャ湾からレポート。2005年よりKTLAの週末アンカーに。「レポーター・オブ・ザ・イヤー」など数々の賞を受賞し、今年度のエミー賞にもノミネートされている。
訪日で日本との絆の太さを実感
日本人の母に誇りを持っている
親心の激励に疑問逆に日本語を敬遠

バックレーさんの祖父が、河野洋平衆議院
議長(右)の父に世話になったことから、
「お会いした時は胸に込み上げるものが
ありました」(バックレーさん)
|
父は海軍兵士で、横須賀に駐屯している時に、宇都宮出身の母と出会い結婚しました。私が生まれたのはメリーランド州ですが、2歳から5歳まで日本に住んでいました。その頃、自分は日本人だと思っていました。ところがある日、欧米人を見かけて「ガイジンだ!」と言う私に、親戚の人が「お前も外人だよ」と言ったのです。それで初めて、自分は日本人ではないのだと認識しました。
5歳でシアトルに引っ越すと、母は私が他の子供たちから差別されないようにと、「あなたは他の人と同じように素晴らしい」と言って聞かせました。ですが、「なぜそんなことを言うのだろう」と反対に母の言葉が心に引っかかり、意識的に日本語を話さなくなって、そのうち日本の祖母から電話がかかってきても話ができなくなりました。それで心を痛めたのは両親でした。そのため父は再度、日本勤務を願い入れ、9歳から3年間、再び日本で過ごしました。
高校生の時に、地元のラジオ局でDJをしたのがきっかけでコミュニケーションに興味を持ち、大学を卒業後、地方のテレビ局のアンカーになりました。92年から7年間はロサンゼルスのKCALで、ノースリッジ地震、ロス暴動、O.J.シンプソン裁判など、激動のロサンゼルスに加えて、香港返還、オクラホマシティー連邦政府ビル爆破テロ、アトランタ五輪公園テロなどを報道しました。
99年、CNNに移籍し、特派員として世界中を回りましたが、特に思い出深いのは2004年にトルコで開催されたNATOサミットです。ブッシュ大統領はスタッフから手渡されたメモを読むと、隣にいたブレア首相に耳打ちをして握手しました。それが何を意味するのかはわかりませんでしたが、ともかく報道を終えると、プロデューサーが「今、何が起こったかわかったか」と言うのです。そのメモは、イラクで主権委譲が行われたことを書いたメモでした。
歴史が変わる瞬間を目撃できるのは感動的ですが、家族との時間をもっと持ちたかったので、KTLAから誘いを受けて、昨年、移籍しました。
枠組みにはめ込むよりも
自分であることに誇りを

週末アンカーを務めるKTLAのニューススタ
ジオのセットで。「この先、10年でも20年
でもKTLAでがんばりたい」(バックレーさん)
|
今春参加した外務省主催の訪日招聘プログラムでは、日本との絆の太さを目の当たりにしました。個人的には、河野洋平衆議院議長と河野太郎衆議院議員との会見が感動的でした。母の父は佐渡出身で、一橋大学を卒業後、同郷の山本悌二郎農林大臣の口利きで農協に就職したのですが、その時に世話になったのが、当時大臣の秘書官を務めていた河野一郎氏で、洋平氏のお父様です。太郎氏と私はそれぞれ3代目に当たります。だから、洋平氏とお会いした時は、胸に込み上げるものがありました。
戦時中、日系人は忠誠なアメリカ人であると証明するために必死の努力をしました。子供たちに同じ経験はさせたくないと願う一心で、日本との絆を断ち切り、その影響は次世代にも及びました。アメリカ人なのですからアメリカナイズするのは良いことです。でも、同時に自分のルーツを知り、それを誇りに思うことも大切です。
片親が日本人の場合、多くが自分のアイデンティティーについて悩みますが、私も以前は同様でした。でもいつしか、それは私が決めることではないのだと気づいたのです。報道の世界に入った時、「苗字を日本名に変えたら」とアドバイスされたことがあります。日本名のほうが目立つからです。母が日本人であることは誇りですし、そのことを多くの人に知ってもらいたい。努力することや決して諦めないことの重要性を教えてくれたのも母です。だからといって、無理に自分を「日系人」という枠組みにはめ込む必要もないと思うのです。今日の私があるのは父のお陰でもあり、私は「フランク・バックレー」であることに誇りを持っています。