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ライトハウスの特集

アメリカでの教育・進学、ビザ・法律、市民権・永住権、観光・レジャー、求人・仕事、グルメ・レストランなど、現地情報誌「ライトハウス」の過去の特集をご紹介。

韓国系マーケットを考察する

Lighthouse編集部


「韓国マーケットには韓国語の情報を」
(岩瀬さん)

81%の家庭で韓国語
ラジオの影響も大きい

 韓国コミュニティーの歴史や特性は見えてきたが、では韓国系マーケットにはどのような特性があるのか、マーケティング・広告代理店であるMIWの岩瀬昌美さんに話を聞いた。岩瀬さんは、アジア系最大級の広告代理店に勤務した経験を持ち、韓国マーケットの事情に詳しい。
 「1970年代から80年代に移民した人が多数います。だから、韓国系では国勢調査の統計(表4)にも見られるように、81%の家庭内言語が韓国語です。ということは、韓国系マーケットでは韓国語の情報でないとメッセージは伝わりにくいということです。また日系社会でも1世の時代は横のつながりが強かったように、韓国系コミュニティーもネットワークが強いため、口コミによる情報が大きく影響します」。

 岩瀬さんによると、ロサンゼルス地区だけで7万5千の家庭で先述のコリアタイムスを購読しているとのこと。テレビやラジオの韓国語放送の多さも、日本語放送の比ではない。
 「ラジオ放送で言えば、早朝から夜まで韓国語放送が流れており、韓国系の店では1日中ラジオをつけているところも少なくありません。スモールビジネスのオーナーが多いので、ラジオの影響力はかなり大きいと言えます」と岩瀬さん。

 韓国コミュニティーは文化的にも日本と近いため、日系社会の次にアメリカ国内での事業を広げる際には、成功しやすいマーケットの1つだと岩瀬さんは話す。
 「食べ物にしても、お米、しょう油、みそ文化ということで、日本食はなじまれているので、抵抗なく受け入れられますし、アメリカ市場の中でもソフトランディングしやすいマーケットであると思います」。

 例えば寿司レストランでも、現在、新規開店の店では、韓国人経営者の台頭が目覚ましい。
 「AT&T、Bank of America、マクドナルドなど、アメリカの大企業も韓国系マーケットには熱い視線を送っています。それは韓国コミュニティーにおける韓国語の需要の高さに由来しています。アジア系マーケット最大のコミュニティーは中国系ですが、中国系は多言語で、ひと口に中国語と言っても数多くの言語があります。TVのCMなどは、2言語は必須です。一方、日系社会で日本語を使う家庭は42%しかいません。そのため、スモールビジネスオーナーが多く、韓国語の需要が高い韓国系マーケットをターゲットにする企業が多いです」。


焼酎のリカーライセンスを
州に変えさせた韓国系団体

 韓国系のスモールビジネスと言えば、リカーストアやレストランを思い浮かべる人が多いだろう。リカーストアのオーナーで形成される団体にKAGRO(Korean American Grocers Association)がある。

 連邦財務省は2002年7月、テロリストのマネーロンダリングを防ぐために設立した財務省管轄のFinCEN(Financial Crime Enforcement Network:金融犯罪対策ネットワーク)が、KAGROの協力を得たと発表した。これは、KAGROメンバーが所有する食料品店の多くが、ATMマシンなど送入金できる機能を備えているため、財務省が同団体に協力を求めたものだが、財務省のニュースリリースによると、「KAGROのメンバーは全米で2万3千人で、商業団体としては韓国系最大級」とある。全米における韓国系人口の割合は1%に満たないのに対し、食料品店の店舗数における韓国系の割合は、全米の11%を占めると報告している(参考資料◆法

 前述のコリアタイムスのキムさんによると、KAGROの設立は約20年前で、現在、韓国系リカーストアはカリフォルニアだけで約4千店舗あるとか。KAGROが関わった活動として有名なのが、焼酎のソフトリカーライセンス化だ。
 「5年ほど前に、コリアンレストラン協会(Korean Restaurant Owners Association)が、KAGROと協力して取り組みました」(キムさん)。

 焼酎は、韓国では「Soju」と呼ばれて人気が高い。カリフォルニア州でアルコールを販売するには、周知の通りリカーライセンスが必要だが、リカーライセンスには2種類あり、ビールやワインなど、アルコール度の低い飲料用のソフトリカーライセンスと、ウオツカなどアルコール度の高い飲料用のハードリカーライセンスがある。

 焼酎のアルコール度は、ビールやワインなどよりは高いが、ウオツカなどのハードリカーよりは低い。にもかかわらず以前は、焼酎を販売するにはハードリカーライセンスが必要だった。そこでレストラン協会はKAGROと協力して州政府に訴えかけ、ソフトリカーライセンスだけでSojuを販売できるようにしたのだ。

 現在では、誰でもSoju登録すれば、ソフトリカーライセンスだけで焼酎を販売できることから、コリアンレストラン協会とKAGROの影響力の大きさがわかる。

資料◆U.S. Department of Treasury, FinCEN News, 2002年7月19日付、(www.msb.gov/pub/kagro.html


他文化の取り扱いは
専門家の監修が必要

 韓国独特な伝統を祝う催しも活発に実施される韓国コミュニティーでは、旧正月や中秋の名月などイベントは多い。韓国マーケットへの進出を狙う企業は、こうしたイベントへの参加も効果的だと、岩瀬さんは言う。
 では、韓国系マーケットに進出する際、どんな点に注意をしたらいいのだろう。
 「儒教の国なので、目上や年上の人には注意して、尊敬的な態度で対応するのは重要な点です。例えば、目上の人の目の前ではタバコは吸わない、目上の人が来たら立ち上がる、言われるまでは座らないなど、特に韓国系だからというよりも、日本の会社でしっかりやっていることがそのまま通用すると考えたらいいと思います」(岩瀬さん)。

 またこれは韓国系に限ったことではないが、他文化に関することは、どんなに似た文化であっても、その国の専門家に意見を求めるべきだと、岩瀬さんは強調する。
 「日本の文化でも、例えばアメリカの会社が着物を使った女性の広告を出すと、些細な点まで気になるものですが、それと同様のことが他の文化にも当てはまります。また日本人だからといって、全員が詳しい着物の種類や着付けのしきたりまで周知しているわけではないように、特に他文化の場合は、それぞれの専門家に監修してもらう必要があります。外国の会社が、よその国も文化に関することを手掛ける時は、細部にわたってよほどきっちりやらないと、やったらマイナスのイメージになる場合もあります」。


 移民のピークから約30年を経て、韓国コミュニティーは経済的にも飛躍的に拡大してきた。お互いの歴史的背景を理解し、良さを尊重して、共に繁栄していくために、私たちに何ができるのか。今1度立ち止まって考えたい。

韓国系の移民関連の年表

1894年
日清戦争始まる
1897年
国号を大韓帝国に改める
1895年
日清講和条約調印
1903年
アメリカへの移民第1号がホノルルに到着
1904年

李承晩氏(後の初代大統領)が渡米
日露戦争始まる
1910年

この頃100万人以上が中国やチリへ脱出
日本が韓国併合を布告
1919年 上海に韓国の臨時政権が樹立
1924年 米移民法改定で事実上のアジア系移民禁止
1945年

第2次大戦終結
朝鮮半島は北緯38度線で南北に分割
1948年 大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国が樹立
1950年
朝鮮戦争始まる
1961年 朴正煕が軍事クーデターで大統領に就任
1965年 米移民法改正で、アジア系も移民可能に
1970年代後半 海外渡航の規制緩和で年間3万人以上が渡米
1979年 朴大統領が暗殺される
1980年

全斗煥が軍事クーデターで政権を握る
戒厳令が敷かれ、民主化運動を鎮圧
1980年代 アメリカへの移民がピークに
1987年 韓国政府が民主化を宣言
1988年 ソウルオリンピック開催


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(2007年3月1日号掲載)