ライトハウス
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ライトハウスの特集

アメリカでの教育・進学、ビザ・法律、市民権・永住権、観光・レジャー、求人・仕事、グルメ・レストランなど、現地情報誌「ライトハウス」の過去の特集をご紹介。

生き生きシニアライフ
リタイア後を豊かに生きる(1)

Lighthouse編集部

高齢化社会の到来は、日本もアメリカも同じこと。気候が良く、のんびり暮らせるカリフォルニアでの老後生活は、とても快適に見える。しかし豊かな老後を迎えるには、それなりの準備が必要なのだ。そこで、シニアライフの準備の実践例と、専門家がすすめる老後への準備を紹介しよう。


ボーッとするのは得意じゃない
忙しく活動するのが理想的

長田稔さん(65歳)

2年半前、63歳で現役を引退した元ペンテルUSA社長。引退後はコーラス、ジャズピアノなどの趣味を満喫するほか、大学で英語を勉強したり、証券・保険のライセンスを取得するなど、新たな挑戦を続けている。

遊びはすぐ飽きる

 引退後はそれまでやっていたゴルフとコーラス、引退後に始めたジャズピアノなど、趣味を満喫しようと計画していた長田さん。だが、いざ趣味にいそしむ毎日が始まると、物足りなくなってしまった。「『遊びはすぐ飽きる』とわかったんです。引退後も何かに挑戦し達成感を味わっていないと、充足感も得られません」と長田さんは語る。

 長田さんはまず、コミュニティーカレッジに入学。「在米40年になりますが、きちんと大学で英語を学んだことがない。そこで、コミュニティーカレッジに通うことにしました」。ESLからスタートし、英語の修了単位を2年かけて取得した。「授業や宿題に取り組む毎日は楽しかったし、充実していましたね」。

 親子以上に歳の離れたクラスメイトたちとの交流も楽しい思い出だ。「最初は話が合わなかったけれど、すぐに仲良くなりました。クラスメイトの数人とは、今でも定期的に集まります。若い人たちと接することで、気分も若返りました」。

 大学での勉強に加えて、証券と保険のライセンス取得にもチャレンジ。「ピアノが日曜日で、コーラスが月曜日、大学が週2日、ゴルフが週2日。金曜日は何もすることがないのでどうしようと考えていた時に、金融サービス会社が毎週金曜日にお金のセミナーを開催しているのを知ったのです」。そのセミナーに参加し、金融について学んだ長田さんは、「若い人たちに、この有益な情報を伝えなければ」と感じた。しかしライセンスがないとセミナー主催はできない。「『試験を受けたら?』とすすめられましたが、それは無理だろうと思いました。でも、必死で1年間勉強したら受かっちゃった(笑)」。

 念願のライセンスを取得した長田さんは、「私は良いファイナンシャルアドバイザーに巡り会えたから、老後資金を無理なく貯めることができました。でも、まだ若いからと、貯蓄をしていない人も多い。彼らに、無理なく資金を貯める方法を教えてあげたい。これは私なりの社会への恩返しです」と語る。

 セミナー参加者のファイナンシャルアナリシスをして感謝されることも、新たな生きがいになった。「私はサウスベイクラシックという、ドラッグ撲滅用資金を集めるゴルフ大会の理事も務めていますが、社会とつながりを持ち、社会貢献活動に取り組むことは、老後の生活を充実させる上で大きな意味があると実感しています」。


写真はイメージ

苦手なことにも挑戦


 60の手習いで始めたジャズピアノも続けている。ところが、ピアノは決して好きではないという。「30回練習しても弾けないこともあるわけですから、楽しいわけではないんです。でも、難しいからこそ挑戦しがいがある。私は同世代の方に『好きなことだけじゃなく、苦手なことにもチャレンジするといい』とアドバイスしています。人間は、楽しいだけじゃ満足できないと思うからです」。

 毎朝5時起床。ウォーキングで1日がスタートする規則正しい毎日は、現役時代と変わらない。引退後も昼間は毎日外出し、奥さんとは別行動。「それがいいんです。リタイアした瞬間、亭主が毎日家にいるっていうんじゃ、奥さんだって息が詰まるでしょう」。行き先こそ会社ではなくなったものの、毎日のスケジュールがびっしり詰まっているのも現役時代と同じだ。「ボーッとするのは得意じゃない」という長田さんにとって、忙しく飛び回る毎日こそ理想のリタイアメントライフなのだ。

 長田さんのリタイア生活をさらに楽しくしているのが、幅広い交友関係だ。「引退の時家内が、『いつまでも会社の看板しょってちゃダメ。これからは1人の人間として勝負』って言ったのです。ペンテル社長という立場を失っても私と付き合ってくれる人が、何人いるだろう。そう考えて、引退前から仕事以外の人間関係を築く努力を続けました」と長田さん。近所の人を集めて「ご近所カラオケ大会」を企画運営したり、日本酒好きが集まる「銘酒会」に参加したりと、日常生活は楽しい仲間であふれている。

 「退職時には『これからどうなるんだろう』という不安もありましたが、おかげさまで現在はリタイア生活を満喫しています」と話す長田さん。趣味だけでなく、目標を見つけてチャレンジし続ける毎日から“リタイア”する日は、決して訪れることはない。



遺産相続とリビングトラスト

円滑な遺産分割・相続に
不可欠なリビングトラスト

取材協力
トレーシー田口
Reavans Corporation
1218 El Prado Ave. #134, Torrance
☎310-320-0588(Ex.111)
www.livingtrustusa.com

引退後の生活プランと同時に、準備をしておきたいのが万が一に備えた遺産相続対策だ。相続でのトラブルを避け、手続きを簡略化すると共に、節税のメリットもあるというリビングトラストに関し、エステートプランナーのトレーシー田口さんに解説してもらった。

 まず、「資産が10万ドル以上ある方は、リビングトラストを作成した方がいいかどうかを、専門家と検討すべき」と田口さんは語る。「トラスト」とは「信託」のこと。「リビングトラストの1番の目的は検認裁判といわれるProbateを避けること」と田口さんは言う。アメリカでは、遺産総額が10万ドル以下の場合、複雑な手続きなしで遺産の分割・相続ができるが、10万ドル以上だと、裁判所でProbateと呼ばれる「遺言検認手続き」が必要だ。
 「これには色んな諸費用がかかるだけでなく、完了までに平均18カ月もかかります。相続まで3〜4年かかったという例も珍しくありません。Probate中の遺産は凍結され、内容は公的情報として公開されます。ですから遺産が多い場合、『私にも相続権がある』という人が現れる事態がないとも限りません」。しかしトラストがあれば、煩雑な裁判手続きや裁判所命令までの待ち時間もなく、速やかに遺産を分割・相続できるというわけだ。
 注意が必要なのは、遺産総額が10万ドルあれば、たとえ借入金が10万ドルあってもProbateの対象になるということ。「不動産をお持ちであれば、何らかのProbate対策は必ず必要です」(田口さん)。
 リビングトラストの種類によっては、相続税の節税も可能だ。「アメリカは比較的、遺産税の控除枠が高く、2008年は200万ドルまでは非課税、その後10年には遺産総額に関わらず遺産税はゼロになります。ところが11年からは、控除枠が100万ドルまで引き下げられます。現在のところ、税率は最高55%の予定ですので、節税メリットは大きいです」。
 また、夫婦間の相続は配偶者控除といい、相続税は一切かからないが、生存配偶者がアメリカ市民でない場合は控除は使えない。ところが、特別なリビングトラストを作成することで、市民権保持者と同等の扱いにすることもできる。
 だが、リビングトラスト作成には1500ドル以上の費用がかかるため、すべての人に適しているとは言えない。田口さんは、「資産の総額が10万ドル以上ある人、離婚歴や再婚歴があり家族関係が複雑な人、相続争いになる可能性がある方は、トラスト作成を検討すべきでしょう」とアドバイスする。リビングトラストは、作成者本人(資産の持ち主)が管理できるため、トラストに入れた資産の出し入れや売却なども自由だ。「年に1度はトラスト内容を見直し、新たにトラスト下に入れるべき資産がないか、新たに現れた相続人はいないかをチェックしてください」と、田口さん。



資産運用・税金対策

低リスクでシンプルな
資産運用が鍵

取材協力
奥村眞吾
(株)奥村企画事務所
奥村税務会計事務所
☎310-782-6953
www.okumura.ne.jp

引退直前の60歳からの賢い資産運用法と、引退後の節税対策について、税務と投資のスペシャリストで、奥村企画事務所代表取締役、奥村税務会計事務所所長である奥村眞吾氏に聞いた。

 401kやIRAなどで貯めてきた老後資金。65歳引退を仮定した場合、60歳から「増やすではなく、いかに減らさないかを念頭に投資すべき」と、奥村氏はアドバイスする。「サブプライム問題で株価が暴落している昨今、30代、40代、50代の時と同じ投資商品で資金運用を続けるのは危険です。株式や株式のミューチュアルファンドなど、長期投資向けでハイリスク・ハイリターンの商品から、ローリスク・ローリターンの商品、例えば国債などに切り替えるべきでしょう」。
 大手金融各社の破綻が相次いでいるが、「この状況はまだ続く」と奥村氏は見る。「リーマン・ブラザーズやメリルリンチだけではありません。今後も大手証券会社や銀行の経営破たんが続くでしょう。米景気は今後20年間冷え込むと、私は予測しています。ですからなおさら、高齢者に高リスクの株式市場での資金運用はおすすめできません」。
 国債の場合、期待できる利回りは3%ほど。まとまった資金があれば、不動産を購入して賃貸し、収入を得るのも賢い方法だ。「不動産価格もまだ下がると思われますが、株券のようにゼロにはなりませんから、その点では低リスクと言えます」。
 資金運用を考える前に、借金の完済も重要。住宅ローン、車ローン、クレジットカードローンがあれば、引退までに完済できるよう計画を立てることが大切だ。「借入金の金利を超える利回りの金融商品は多くありません。引退資金をどう運用するかより、まずはローン返済を優先すべきですね」。
 「引退後の生活はコンパクトに」が奥村氏のモットーだ。大きな家は売却し、コンパクトな住居に住み替える。売却益を引退後の資金に回すことができ、光熱費やメンテナンス費用もセーブできる。また、日本にある資産は、引退前にアメリカに移す方が良いと奥村氏。「日本の銀行で定期預金をしても、得られる利回りはわずか。アメリカで運用した方が、大きな利回りが得られます。ただし、送金は本人の口座にすること。配偶者や子供の口座に送金しようとすると、贈与税の対象になります」。
 また、日本で所有する不動産も、早めの段階で売却した方が良い。「日本では、築5年もすれば価値がなくなります。長く持っていれば価格が上がることも期待できませんし、管理は煩雑で、コストもかかる。それに、本人が死亡すれば、遺族に多額の相続税が課せられます」。
 老後の資金運用のポイントは、ローリスクの金融商品を活用すること。また、資産をわかりやすいようにまとめ、シンプルに運用すること、といえそうだ。